やきとり伊勢広 店主 中村卓也さん
2021年2月18日取材
やきとり伊勢広 店主 中村卓也さん
ーー室蘭グルメ「室蘭やきとり」のお店「やきとり伊勢広」の3代目店主・中村さんに「室蘭へUターンした経緯」「室蘭の魅力」「室蘭やきとりにかける熱い想い」について聞いた。
室蘭は海も山も近く、落ち着く環境。室蘭を中心に西胆振地区で夏も冬も色々遊べる

ーー中村さんはいつ頃、室蘭に戻ってこられましたか?
戻ってきたのは15年前に(当時22歳)戻ってきました。
ーー戻ってきた時に「室蘭のここがいいな」と改めて思ったところはありますか?
室蘭の良いところは、落ち着く環境があることと、スポーツが趣味なのですが海、山が近いところです。冬はスノーボード、夏はサーフィンができて、釣りも好きなんですが港もあって、魚が沢山います。船の免許も取って、釣りも楽しんでいます。
ーーその良いところは戻ってくる前から感じていましたか?
高校まで室蘭に住んでいたんですが、学生の時には感じていませんでした。高校を卒業して、4年間、札幌で暮らしました。札幌は色々なものがあって楽しかったんですが、札幌はたまに遊びに行く場所という感覚でした。住むなら室蘭がいいなと思っていて、のんびり時間が流れていて、海、山、川と自然が沢山あって遊べるというのは魅力ですね。
ーー札幌は4年間いて、満足したという感じですか?
そうですね。もし札幌に行っていなければ、未だに札幌で暮らしてみたいとと思ったかもしれないです。
ーー中村さんはプライベートではどんな風に過ごしていますか?
夏はサーフィンをやったり、冬はスノーボードをやっていますが、休みの日は子どもと遊んでいます。その他は、先ほど話したような今取り組んでいることや夢のことをお酒を飲みながら話すことが楽しいです。
ーーお子さんと遊ばれるのは室蘭の中で遊ばれるんですか?
夏は室蘭岳に登ったり、川釣りをしたりします。冬では室蘭でも雪遊びができますし、温泉に入りにいったりもします。室蘭を中心に西胆振地区の洞爺湖町、伊達市、登別市、白老町と周辺も含めて遊ぶとすごく遊べると思います。
ーー中村さんは子どもの時に好きだった場所ってありますか?
小さい時は家の近くの裏の川にザリガニがいて、そこで遊ぶのが好きでした。でも、今ではそういう場所がなくなってしまっています。今の子どもたちは、きらん(生涯学習センター)や図書館、科学館にいくといいと思います。子どもが自然の中で遊べる場所ももっと増えるといいですね。
人を楽しませたり、会話をするのが好き。好きなことするためにお店を始めた

ーー室蘭に戻ってきてすぐに飲食店で働いたんですか?
違います。はじめは工場で働いていました。
ーーどうして、飲食店の世界に飛び込んだんですか?
高校の時に接客業のアルバイトをしていました。その時に接客業がすごく楽しく、札幌の専門学校の時も居酒屋でアルバイトをして、さらに飲食業、接客業が楽しいと感じました。室蘭に戻ってきた時は、室蘭は工業のまちで親も工場で働いていたので、工場での仕事にも興味があって、7年間、工場で働きました。工場勤めも安定はしていて、充実はしていましたが、やっぱり飲食業、接客業をやりたいという想いを持っていたんです。30歳になるタイミングで、高校の時の友人が「一緒に飲食業をやってみないか」と誘ってくれて、一緒にお店を開いたのが始まりでした。
ーーそれって勇気のいる決断ですよね。
そうですね。まわりからは笑われてしまいましたね。当時勤めていた工場の上司からは10年続いたら花を贈ってやるって言われました(笑)
ーー元々「お店を作る」ということが夢だったんですか?
自分自身は「お店を作る」というよりは、元々、人を集めて遊んだり、楽しませたり、会話をしたりすることが、すごく好きでした。自分はいつもニヤけてると言われてしまうんですが、飲食業だと笑ってると褒めてもらえるので、自分に向いているなと感じます。
ーー飲食業は中村さんの天職なんですね。ご友人とやっていたお店から独立しようと思ったきっかけはあったんですか?
友人とお店をやっていたんですが、やりたい方向が変わってきたのがきっかけです。自分自身は「お店に立って、お客様と会話がしたい。そして、そのお客様達と歴史を作っていきたい」と思っていて、そういうお店を目指していました。友人とのお店が年数を重ねていくと、経営側の役割が増えていきました。お店で会話がしたい想いが強かったので、方向性が変わってきているのを感じました。そんな時に、今の店舗が引き継ぎ手を探しているという話しがありました。
『室蘭やきとり』はストーリーがある、歴史をつなげていきたい

ーー今、中村さんは伊勢広の3代目でしたよね?
はい、3代目です。初代が18年間、2代目が4年間、そして僕が5年目になります。2代目と話しをさせてもらうと親や家族と縁があることが分かりました。そして、伊勢広を引き継がせていただくことを決めた時には、先代が半年間、色々とお店のことを教えてくれました。「(やきとりの)タレを引き継いで、看板(店名)は変えてもいい」と言ってくれていましたが、常連のお客様と話しをしていると、「昔、オヤジときたお店だ」「このお店にはこんな思い出がある」とお店の歴史や思い入れをお客様から教えてもらいました。「そんな歴史があるお店を引き継ぎたい」という想いが強くなっていき、看板もそのままに、タレを引き継がせていだたくことにしました。
ーー『室蘭やきとり』の魅力ってなんですか?作り手として感じる魅力はありますか?
各地の方々と多く話す機会があるんですが、みなさん地場のものを使って、名物を作りたいという想いがあるんです。『室蘭やきとり』はストーリー(歴史)があるというのがすごいと思います。『室蘭やきとり』は1930年代の日中戦争期に軍人の方々の靴に豚の革を使ったことで、豚の肉が沢山余って、それを室蘭の工場の方々が活力源として食べ、元気をつけて仕事をしていたことがルーツです。そういう歴史がある食べ物というのがすごいことだと思っています。ただその歴史を知らない人が沢山いるというのが現状です。市内40店舗に増えた今まで、先輩たちが『室蘭やきとり』というのを有名になるようにしてきたというのが、さらにすごい食べ物だと感じます。室蘭自体を知らない人もいますし、室蘭に工場があって、『室蘭やきとり』があるいうことを知らない人も多くいますので、情報を発信していくことが大切だと思っています。「歴史をつなげていきたい」、その役割が僕らの世代だと感じています。
ーー「歴史をつなげていきたい」とのことですが、いつ頃からそう思ったんでしょうか。
僕は室蘭のまちが好きです。元々、やきとり屋になりたかったという訳ではなく、僕がやりたかったのは「みんなに楽しんでもらえる、みんなを楽しませられる場を作りたい」「みんなに喜んでもらえることをしたい」ということです。それをするのが飲食店で、お話をいただけことで、やきとり屋を始めています。好きな室蘭をもっと多くの人に知ってもらいたいんです。観光客の方にもまた来たくなるきっかけの一つとして、『室蘭やきとり』を知ってほしいです。歴史がある食べ物の『室蘭やきとり』を作れるお店を引き継げたことは幸運だったと思いますし、僕がやりたかったことと合っていました。お客様にもおいしく食べていただけるように、豚のお肉にもこだわっていますし、お酒との食べ合わせも考えています。おいしく食べてもらえるように頑張っていて、多くの方に室蘭にきてもらい、僕たちが歴史や想いも伝えて、室蘭を知ってもらいたいです。
ーー中村さんの地元愛、やきとり愛を感じますね。室蘭やきとりの歴史を今、中村さんが担っていると感じますが、これからどんなことをしていきたいですか?
僕はずっとお店に立っていたいです。これから一緒に働いてくれる人が増えた時に、その時のスタッフでしたいことをやっていきたいです。
『室蘭やきとり』は永遠に課題。生産者の想いを伝えて、もっとおいしく

ーー伊勢広の『室蘭やきとり』をこんな風にしていきたいというイメージはありますか?
調理をずっとしていた訳ではなく、工場で働いていたところから、仕事をやめて、飲食店を始めています。室蘭は良いところだと思うんですが、室蘭は土地が狭い分、みんなつながりがあるんです。料理をしている職人さん達もつながりがあって、まだまだ僕は年数が浅いので、色々と教えていただいて、助けていただいています。「こうやったらおいしくなる」や「こういう食べ方がある」なども教えてくれますし、一緒にイベントをやったりもしています。伊勢広のタレを使って、料理を作ってもらったりと、まわりの方に助けてもらいながら、勉強しています。やきとりはお肉の種類、お肉の切り方、串の差し方、炭の並べ方、全員がそれぞれ違うので、永遠に課題です。
ーー永遠に課題だと思うようなことを仕事にして、やりがいのある仕事に出会えたんですね。
僕はまちを盛り上げたり、お客様に楽しんでもらうことはもちろん、雰囲気や空間作り、接客もやりながら、楽しんでもらう1つに『室蘭やきとり』があって、料理のレベルも上げ続けたいです。お店でのこだわりは、生産者の方々の想いを伝えたいということです。お米はニセコの農家さんから仕入れているんですが、ニセコの農家さんに訪問して、「どうしてこういう作り方をしてるのか」「どうしてこういうおいしい味になるのか」などお話を聞いて、お客さんには料理を提供する前に生産者の方々に聞いてきた話しをしています。そういう生産者の方々の想いを伝えてから、料理を食べてもらうと、よりおいしく感じてもらえて、料金以上の価値になるんです。日本酒でも造っている蔵にお邪魔して、日本酒を造るお手伝いをさせてもらって、お客様に出してます。想いを伝えながら飲んでいただくと、さらに楽しんでいただけると思っています。お客様には僕たちと会話をしながら、もっと楽しんでもらいたいです。まだ料理の経験は浅いかもしれないですが、想いを知ってもらうことでおいしさをプラスして、楽しんで帰ってもらいたいと思っています。
ーーそういう取組みも楽しんでやられているんですね。
僕はどんどん人とつながっていきたくて、つながりができていくのが楽しいですね。そして、お店のためになって、お客様が喜んでくれることになっていくので、いいサイクルになっています。
ーーこれからより室蘭の魅力、『室蘭やきとり』の魅力を伝えていくために考えていることはありますか?
『室蘭やきとり』の会(団体)を作りたいと思って活動しています。自分が楽しみたいと思っていますし、やる人がいなかったので、思い切って作ることにしました。目標はやきとりのフェスをやることで、『室蘭やきとり』と音楽を合わせたフェスをやりたいです。「やきとりの里」なんていうのも考えていて、『室蘭やきとり』の歴史の映像が流れてて、お土産が買えたり、『室蘭やきとり』が食べられたり、子どもが遊べる場所があるような場所を作れたらいいなと思っています。そして、いつか室蘭の昆布を食べた豚も育てて、そのお肉で『室蘭やきとり』を焼くのが夢ですね。そこに辿り着くためには、横のつながりができていないとできないので、『室蘭やきとり』の会があった方がいいなとの想いで作りたいと思っています。
ーー最後に、新しいことにチャレンジしてきていますが、続けてこれた原動力はなんでしょうか?
お客様の「楽しかったよ、おいしかったよ、また来るね」と」いう言葉があったからですね。コロナ禍で特に感じたんですが、普通はお客様が入ってきて、こちらが「いらっしゃいませ」と言うところで、お客様が入るなり「大丈夫か?」と言ってくれる人がとても沢山いました。常連さんたちや皆さんに支えられているなと感じましたし、自分たちがやっていることは間違ってはいなかったなと思えました。ちゃんとお店を続けて、変わらない味と、変わらない接客を続けて、お客様たちに恩返ししたいです。そして、いつかそのお客様がお子さん達を連れてこれるように続けていきたいです。


お店情報
店名 | やきとりの伊勢広 |
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住所 | 〒050-0074室蘭市中島町1-9-12 |
電話番号 | 0143-47-0317 |
営業時間(平日) | 17:30~22:00 |
営業時間(週末・祝前日) | 17:30~23:00 |
営業時間(ランチ) | 11:00~14:00 |
定休日 | 日・祝日 |
ホームページ | https://www.n-ya.co.jp/ |