パナソニックITS株式会社 室蘭開発室 新規事業推進課 課長 佐藤慎吾さん
2021年3月3日取材
パナソニックITS株式会社 室蘭開発室 新規事業推進課 課長 佐藤慎吾さん
ーー室蘭にオフィスをかまえる「パナソニックITS株式会社」の佐藤さんに「室蘭へUターンした経緯」「室蘭の魅力」「パナソニックITSが挑む室蘭でのチャレンジ」について聞いた。

室蘭は綺麗な景色を見ながらドライブできて、海産物などおいしいものもいっぱい

ーー佐藤さんは室蘭出身ですか?
北海道帯広市出身で、室蘭工業大学へ進学し、大学時代を室蘭で過ごしました。
ーー室蘭工業大学在学中は室蘭楽しめましたか?
車が好きだったので、入学してから免許を取得して、アルバイトを頑張って、中古車を購入しました。そして、室蘭の景色を楽しみながら山の道だったりをドライブしました。北海道内を旅するのも好きで、北海道一周を2回くらいしました。
ーーその時から「室蘭綺麗だな」と思っていましたか?
そうですね。今でも綺麗ですが、夜景がものすごく綺麗でした。天気が良いときは講義の合間に地球岬やイタンキ浜、トッカリショへドライブによく行っていました。特に目的もなくイタンキ浜に行って、海を眺めるということもやっていました。
ーー室蘭以外から室蘭に来た人が「室蘭は海も近くて、スキー場も近くて、温泉まで近い」「室蘭良い場所だよ」って言ってくれて、室蘭の良さを気づかせてもらうことがあります。
佐藤さんは何年ぶりに室蘭へ戻ってきたんですか?
大学卒業して横浜(パナソニックITS株式会社本社)で18年間働いて、18年ぶりに室蘭へ帰ってきました。横浜ではずっと車載システムの開発をやっていて、後半は地域課題解決にもかかわり、18年経って戻ってきています。
ーー18年ぶりに室蘭に戻ってきた時は室蘭の変化を感じましたか?
室蘭の風光明媚な観光資源はまったく変わらずに、18年前と同じように良いなと思いました。当時は学生で室蘭のおいしいものを知りませんでしたが、戻ってきてから、色々教えてもらって、特に海産物や室蘭の特産物が、とてもおいしいことに気づきました。オフィスの近くにもおいしいお店が多いです。
ーー市内企業の話なのですが、求人を出した際に首都圏等の給与よりは低くなってしまうことがあります。ただ生活費が首都圏よりも安かったり、お金には換えられない自然があったり、生活の豊かさがあり、室蘭は生活しやすいまちだと思うという話しも聞きますが、いかがでしょうか?
たしかにそうだと思います。室蘭は本当に食べ物がおいしいと思います。室蘭は「海産物がおいしい」とあまり知られていないように思います。ウニもおいしいし、ホタテもすごくおいしい。首都圏と比べたらものすごく安く食べることができるので、もっと知ってほしいですね。室蘭は道の駅のところに温泉(むろらん温泉ゆらら)もあったり、登別温泉もとても近く、すぐ温泉に行くことができて、ゆっくりできることも魅力だと思います。
室蘭は「課題の最先端」、最新技術を試せる価値ある土地

ーー佐藤さんは室蘭へ帰ってきましたが、どういう経緯で室蘭へ帰ってくることになりましたか?そして、その時どう思いましたか?
室蘭に来る3年前から田辺社長(パナソニックITS株式会社代表取締役社長)が地域課題解決をしたいという想いがあり、横浜で活動を開始しました。そのうえで、どこで活動しようか考えた時に、いくつか候補があったんですが、室蘭はもともと工業で栄えたまちで、国立大学の室蘭工業大学があり、技術で培われた風土がありました。室蘭は交通の要所で、弊社は車載関連の技術があるので、交通に関する技術を活かせると思いました。当時、室蘭グリーンエネルギータウン構想が国土交通大臣賞を受賞したり、室蘭はオープンデータを推進していて、特にGIS(地理空間情報システム)のデータを先進的に公開したりと、そういった技術のベースがあったことで、「地域課題解決の活動を室蘭でしよう」と決めました。その時に社内で公募がありました。今、室蘭のオフィスいるのはみんな北海道出身で、縁が強いメンバーで、みんな「北海道を良くしたい」という想いから希望して、2020年4月、室蘭にオフィスを開設しました。
ーー室蘭の人口は1970年の16万人をピークに減少し続け、今では半分の8万人台です。室蘭は年々、人口減少が進んでいて、これから日本に、そして世界に訪れる課題が室蘭にはすでに起き始めていると感じるのですが、いかがでしょうか。
室蘭は世界の中でも「課題の最先端」だと思います。18年前よりも交通量が減っていて、室蘭の繁華街である中島地区は当時、人が多くいた印象ですが、以前より少なく感じます。当時は高齢者と接する機会がありませんでしたが、今、市役所と一緒に高齢福祉に関するテーマにも取り組んでいて、地域の高齢者の方々と会話をすると、今まさに様々な課題に直面しています。これから日本全国で起きる課題が、室蘭はすでに見えていて、発生していることはすごい価値だと思っています。それを今、一緒に解決しようということで、まず廃棄物回収の改善や、MaaSをはじめ公共交通への取組みを行っています。市民の方達も感じている課題があって、今、取組みが進められています。室蘭では最新の課題と対峙できて、そこに最新の技術を対応していけるという、すごく価値を感じる土地です。
ーーこの室蘭で見つけた仕組みは他の地域でも役に立つということでしょうか。
そうです。室蘭に似ている港まちなどは、そのまま活用できると思いますし、日本全国の地方都市へは展開できると思っています。まずは室蘭で取組みを進め、胆振地域、北海道、そして日本全国に展開していきたいです。
「人のつながり」が地域課題解決につながる。そして、みんなを幸せに

ーーこれから取り組んでいきたいということはありますか?
一緒にまちを作っていくというイメージは必要だと思っています。昔は室蘭は裕福なまちだったと思いますが、これからの室蘭はみんなで協力して進んでいくことが必要になってきていると思います。高齢者も、若い世代も、大学生も一緒に課題に向き合い、一緒に解決していくことが、これからさらに必要です。室蘭工業大学の講義に参加し、学生と一緒に地域課題について考えることも行っています。そういった共に考える文化を作っていくことが重要だと感じていて、まち全体で助け合うことをパナソニックITSでは技術を軸にして貢献していきたいです。
ーー室蘭で活動をやっていけるという可能性は感じていますか?
感じています。オフィスを開設する前の2020年2月に市内のタクシー会社と会話をし、「一緒に公共交通の課題解決に取り組んでいこう」と言ってもらえました。それがMaaSの取組みのはじまりです。廃棄物回収の改善についても、事業者の方が「やろう」と言ってくれました。最初は「人とのつながり」からはじまっていて、室蘭はやる気のある方が多いです。色々なつながりができることで、やっていけるという実感があります。MaaSの実証事業も少数でのスタートでしたが、参加してくれる団体や人が増えてきて、やる気のある人も多く恵まれていると感じています。
ーー今後こんなことができたらいいな、将来はこんなまちにできたらいいなという思いはありますか?
大学との連携だと学生と一緒に実際の地域課題に対して取り組み、地域への実装、そして解決していくことをやっていきたいです。また、まちでは「免許を返納し移動に困っている方がいる」などの具体的な課題を直近で解決していきたいと思っています。その先として、みなさんが笑顔になれる幸せを作って与える取組みをやっていきたいです。
ーー佐藤さんは「みんなが幸せになる」とはどうなることだと考えていますか?
QOL(クオリティ・オブ・ライフ)と言われますが、人それぞれ幸せの価値観は違うと思いますが、それぞれが幸せを実現できることが大事だと思っています。人によっては自己実現だったり、家族との暮らしだったり、それぞれが今よりもプラスに幸せだなと思うことを目指していきたいです。できた製品を提供するだけではなく、非常に難しいですが、みんなが笑顔になることをしたいと思っています。
ーーものが沢山あることも豊かなことかもしれませんが、色々なものが沢山あると幸せなのかというと違うように感じます。ものが少なくても幸せだと思うのですが、いかがでしょうか?
ものは少なくても、人とのつながりが幸せにつながっていくと思っています。なので、人をつないで、人が良い距離感でつながっている社会を作りたいですよね。弊社ではICT技術を活用したり、アプリケーション等を開発していますが、それはあくまでベースで、幸せのためにつながれたらいいですね。
ーー最新の仕組みも使って、より生活しやすくできたらいいですね。
室蘭では取組み協力してくれる地元の雰囲気や人脈があるため、取組みやすいと感じています。私たちがやる気になれば、みんなが協力してくれると言ってくれているので、しっかりと引っ張っていけるように頑張っていきます。
ーー室蘭も社会も今の仕組みのままでは成り立たなくなってくると思います。佐藤さんたちが、パナソニックITSが「解決していかないと」という使命感があるのでしょうか。
あります。田辺社長が「社会貢献しよう」との想いがあり、会社のスローガンにもなっています。そこに共感し、取り組んでいます。






室工大生は素直でピュア、人に接するベースがある優れた人材

ーー佐藤さんも室蘭工業大学出身ですが、企業から見て、室蘭工業大学生の良さとはどのような点でしょうか。
パナソニックITSでも室蘭工業大学卒業生が一番多いです。「すごく素直だ」と思っています。室蘭の環境で生活し、学業もですが、アルバイトなど地域の方と接する機会があったりと、首都圏の学生では経験できないような大学生活を過ごせる希少な環境で育てられた人材だからだと思います。18年ぶりに帰ってきて室蘭工業大学生と接すると、受け答えも素直でピュアです。学業もしっかりとやっていますし、人に接するベースができていて、人間性が優れていると感じます。
ーー地方には地方の良さがあり、地方で過ごした学生の良さもあるということでしょうか。
室蘭工業大学の学生はしっかりと集中して勉強していますし、学習する習慣もできていると思います。そして、状況に応じて頑張ることができると思います。ただ、最新の技術や知識に接する機会が少ないので、パナソニックITSでは最新の技術や知識を持っているので、早くから技術に触れられる機会を作り、教えていきたいと思っています。
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