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平成18年第5回答申書

答申書

答申第4号
平成18年7月13日

室蘭市長 新宮 正志 様

室蘭市情報公開・個人情報保護審査会
会長 奈良 泰哉

室蘭市個人情報保護条例第35条の規定に基づく諮問に対する答申について

平成18年5月9日付け室医相第7号をもって諮問のありましたことについて、下記のとおり答申します。

諮問事項

保有個人情報「精神科カルテ(外来)」の不開示決定に対する異議申立ての審査

答申内容

別紙のとおり

答申第4号別紙

諮問事項に対する結論等

審査会の結論

異議申立人の開示請求に係る保有個人情報「精神科カルテ(外来)」について、実施機関が全部を不開示としたことは妥当であると判断する。

異議申立てに至る経緯

(1)保有個人情報の開示請求
異議申立人は、平成18年4月10日、室蘭市個人情報保護条例(以下「条例」という。)第16条の規定に基づき、実施機関(室蘭市長:市立室蘭総合病院)に対して、保有個人情報「精神科カルテ(外来)」について開示の請求(以下「本件請求」という。)をした。

(2)不開示決定
本件請求に対して、実施機関は、条例第17条第1号に該当することを理由として、保有個人情報不開示決定を行ない、平成18年4月24日付けで異議申立人に通知した。

(3)異議申立て
異議申立人は、平成18年4月25日付けで、実施機関の行なった不開示決定処分(以下「本件処分」という。)を不服として行政不服審査法第6条の規定に基づき異議申立てをした。

異議申立ての趣旨及び理由

(1)趣旨
「開示して欲しい」との申立てから、本件請求に対し実施機関が行なった本件処分の取消しを求める。

(2)理由
「自分の病気の履歴」との理由から、本件処分に対する不開示理由に納得できない。

実施機関の説明要旨

(1)本件異議申立ての対象の保有個人情報について
本件異議申立ての対象となる保有個人情報(以下「本件情報」という、)は、本件請求に対して特定した公文書「精神科カルテ(外来)」に記録された情報のすべてである。

(2)本件情報を不開示とする理由について
条例第17条第1号該当性について
ア.精神科の治療は、医師と患者との信頼関係が重要であり、本件情報を開示することにより誤解による疑念等を抱くことが考えられ、今後の治療に少なからず悪影響を与えるおそれがあり、本件情報を開示することは異議申立人にとって不利益となるものである。
イ.異議申立人は、些細な環境因で病状が不安定になる面が認められ、異議申立人について記載されている所見欄には、異議申立人が誤解や疑念を抱くと考えられる記載がある。
ウ.異議申立人が、イの記載を見た際には、人格が否定されたと感じ、治療関係が悪化し、医療者に対する信頼関係が悪化し、より抗議行動を大きくする可能性がある。
エ.異議申立人は、病状悪化のため、現在、精神科入院中であるが、本件情報の開示が刺激となり、病状がさらに悪化する可能性がある。
オ.本件情報のうち、イの記述以外の部分のみを開示しても、異議申立人にとっては隠された部分についての不安がより大きくなり、そこに記載されている内容を想像し、かえって医療者に対する信頼を損ねてしまい、治療行為の継続が困難になってしまう可能性がある。
カ.イの記述がある以上、部分的に見せるということは、なぜ隠す部分があるのかという疑念から、医療者に対する不信感が増大することにより、抗議行動などがエスカレートすることが予想され、争いごとになればなるほど、病状は悪化する可能性が高い。
キ.全部を見せないということで、一時的な抗議行動は予想されるが、部分的に見せられて、隠された部分についての不安がより大きくなるよりは、部分的にも開示しないほうが、治療に専念する環境を早く整えるためには、効果的であると考える。
ク.本件情報を部分的に開示することが、異議申立人の健康等に悪影響を及ぼすおそれがあるので、本件情報のすべてが条例第17条第1号に規定する不開示情報に該当する。

審査会の判断

(1)はじめに

条例の不開示理由の該当性の審査を実施するに当たり、実施機関の説明のほかに、異議申立人の意見を聴く機会を設け、それぞれの主張を総合的に勘案した上で、不開示理由の該当性の判断を実施すべきところであるが、今回は、異議申立人が入院加療中であり、意見陳述等を実施することができない状況での審査となった。
実施機関の説明によると、異議申立人の病状が不開示理由の要因となっていることから、異議申立人の病状の回復を待って、審査会の結論を出すことも検討したが、条例上、不服申立てを受けた実施機関は、90日以内に当該不服申立てに対する決定をする努力義務が課されていること、また、病状回復の時期については、未確定であることから、結論を先延ばしすることは、審査会の職責を全うすることにならないと判断した。
したがって、本件情報及び実施機関の説明に基づき、当審査会としての審査を実施し、結論のとおり判断したものである。

(2)不開示情報の該当性について
ア.条例第17条第1号の不開示情報である開示請求者の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがある情報については、開示することにより得られる利益よりも、不開示にすることによる開示請求者の権利利益の保護が優先する場合において、不開示とすることを定めたものである。
イ.実施機関が保有する本件情報のなかには、開示請求者が誤解や疑念を抱くおそれがある記述などが記載されていると判断される。
ウ.イの記述があったとしても、カルテについては原則として開示されるべきものと考えられ、通常であれば、誤解や疑念を抱くおそれがあったとしても、お互いが納得するまで話し合うことで、信頼関係が深まるものと考えられる。
エ.本件情報を不開示情報とする実施機関の説明では、誤解や疑念を抱くような記述を開示請求者が見ることで、抗議行動がエスカレートすることが想定され、その結果として、開示請求者の病状を悪化させるおそれがあると説明している。
オ.精神的な疾患をもつ患者の病状に対して、何がどのような悪影響を及ぼすのかについては、当審査会としては専門的な知識がないため、断定的な判断はできないが、イの記述を開示請求者に開示することにより、開示請求者の病状に悪影響を及ぼすおそれがあることは否定できない。
カ.したがって、本件情報のうち、イの記述については、条例第17条第1号に該当することが認められる。

(3)不開示決定の妥当性について

ア.部分開示の可能性について
本件情報のうち、条例第17条第1号に該当すると認められる情報が存在することは、前述(2)により当審査会としても理解できるものであるが、本件情報のすべてが不開示情報であるという考え方については、次のような意見により、部分的には、開示すべきとの意見があったところである。

(ア)病院と患者の信頼回復が開示請求者の治療には重要であり、すべてを開示しないという決定では、信頼回復は望めない。

(イ)開示を受ける権利を条例で保障している以上、開示請求者の権利を最大限に尊重して、開示できる可能性がある部分については、開示すべきである。

(ウ)開示請求者本人の情報の開示を求めている場合には、明らかに不開示情報に該当する場合でなければ、不開示とすべきではない。

イ.本件情報のすべてが不開示情報に該当することについて
前述アのとおり、部分的にでも開示することが、本人のためにも、条例の趣旨からも必要であるとの意見があったが、次の理由により、当審査会としては、本件情報のすべてが不開示情報に該当すると解するのが相当であると判断する。

(ア)本件情報のうち、前述(2)により条例第17条第1号に該当すると認められる記述以外の部分を開示したとしても、異議申立人にとっては隠された部分についての不安がより大きくなり、病状が悪化するおそれがあるという実施機関の職員である医師の説明を尊重する以外に判断材料がない。

(イ)部分的にでも開示することで、信頼回復が見込めるという考え方は推測の域を出ることはできず、本人の利益になるという確証がない。

(ウ)不開示決定の理由に開示請求者の病状が上げられているので、病状が回復した場合には、再度開示請求をすることは可能であり、病状が回復した後の請求であれば、開示される可能性があることから、本人の権利を不当に侵害することにはならない。

(エ)すべてを不開示情報と解してなされた決定は、開示請求者の利益保護のための決定であり、開示されることによる利益がそれを上回ることを立証することはできない。

(4)終わりに

よって、当審査会は、「審査会の結論」のとおり判断する。

付帯意見

1.今回の答申については、実施機関の不開示決定が本人の病状に配慮してなされた決定である旨の説明を尊重し、審査会としても本人の病状を考慮して不開示妥当と判断したものであるが、カルテについては、原則として開示すべきものであることを十分認識すること。

2.本人の病状が回復した場合において、再度開示請求があった場合には、状況に応じて、開示することを検討すること。

3.本人との信頼回復に尽力するとともに、本人に対しての説明責任を果たす上においても、本人の知る権利を保障する上においても、病状説明資料を提供するなど、本人の利益を優先した対応をすること。

4.本人の病状に応じて、本人が転院を希望した場合には適切な措置を講じるなど、本人の権利への十分な配慮を行なうこと。

審査会の審査経過

1.平成18年5月9日、諮問書及び理由説明書を受理

2.平成18年5月30日、審議(事案の経過・概要の精査)

3.平成18年6月6日、実施機関に対して不開示理由の補足説明資料を要求

4.平成18年6月16日、実施機関より不開示理由の補足説明資料を受理

5.平成18年6月26日、審議(審査会判断の決定)

6.平成18年7月10日、審議(答申案作成)

7.平成18年7月13日、答申

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