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平成20年第13回答申書

答申書

答申第10号
平成20年6月25日

室蘭市長 新宮 正志 様

室蘭市情報公開・個人情報保護審査会
会長 奈良 泰哉

室蘭市情報公開条例第15条の規定に基づく諮問に対する答申について

平成20年5月23日付け室港総第114号をもって諮問のあったことについて、下記のとおり答申します。

諮問事項

公文書「港湾施設(絵鞆小型船だまり)使用許可申請書、同使用許可書、室蘭港エンルムマリーナ使用許可申請書、同使用許可書」の非公開決定に対する異議申立ての審査

答申内容

別紙のとおり

答申第10号別紙

諮問事項に対する結論等

審査会の結論

異議申立人の公開請求に対して、実施機関が全部を非公開とした公文書「港湾施設(絵鞆小型船だまり)
使用許可申請書、同使用許可書、室蘭港エンルムマリーナ使用許可申請書、同使用許可書」のうち、「申請者欄の全て」、「艇の種類等欄のうち艇の材質以外の部分」、「船舶検査証書番号」、「海技免許状番号」及び「摘要欄に記載された艇の長さの記述」を除いた部分は、公開すべきであると判断する。

異議申立てに至る経緯

(1)公文書の公開請求
異議申立人は、平成20年2月11日付け(実施機関同月12日受け)で、室蘭市情報公開条例(以下「条例」という。)第6条の規定に基づき、実施機関(室蘭市長)に対して、公文書の公開請求(以下「本件請求」という。)をした。

(2)非公開決定
本件請求に対して、実施機関は、条例第8条第1号に該当することを理由として、本件請求に係る公文書のうち、「港湾施設(絵鞆小型船だまり)使用許可申請書、同使用許可書、室蘭港エンルムマリーナ使用許可申請書、同使用許可書」について、非公開決定を行ない、平成20年3月4日付けで異議申立人に通知した。

(3)異議申立て
異議申立人は、平成20年3月21日付け(実施機関同月24日受け)で、本件請求に係る公文書のうち、「港湾施設(絵鞆小型船だまり)使用許可申請書、同使用許可書、室蘭港エンルムマリーナ使用許可申請書、同使用許可書」について、実施機関の行なった非公開決定処分(以下「本件処分」という。)を不服として、行政不服審査法第6条の規定に基づき異議申立てをした。

異議申立ての趣旨及び理由

(1)趣旨
本件処分の取消しを求める。

(2)理由
個人に関する情報は請求した文書のうち、氏名等のほんの一部であり部分公開により公開できる。

実施機関の説明要旨

(1)本件異議申立ての対象の公文書について
本件異議申立ての対象となる公文書(以下「本件文書」という。)は、「絵鞆小型船だまり及び室蘭港エンルムマリーナの利用者から提出された使用許可申請書及び利用者に対する使用許可書」である。

(2)本件公文書を非公開とする理由について
条例第8条第1号該当性について
本件文書には、申請者に関する情報(住所、氏名、電話番号、勤務先、所属クラブ、海技免許状番号、共同所有者の有無、販売代理店)、艇に関する情報(船名、船種、長さ、幅、重量、材質、艇体のメーカー、形式、機関のメーカー、馬力、形式、船舶検査証書番号)のほか、使用期間、使用施設、使用料の額等が記載されている。
そのうち、申請者に関する情報については、特定の個人を識別できるもの及びその可能性が高いものであり、条例第8条第1号に該当する。
艇に関する情報については、単独の情報であれば、特定の個人を識別できるものではないが、船名、艇種、長さ、メーカー等の情報が合わさることで、特定の個人の船であることが、同じ施設(絵鞆小型船だまり、エンルムマリーナ)を使用している者等にはわかることとなり、特定の個人を識別できる可能性が高く、条例第8条第1号に該当する。
その他の情報については、使用期間、使用施設、使用料等であり、使用期間については、年度当初に1年間の使用許可を行なうのが通例であるため、年度ごとにどの使用許可書も同様の記載内容となっており、使用施設についても、どの使用許可書も使用施設名が記載されているだけであり、使用料についても条例に基づく金額が記載されているだけであり、それらの情報については実施機関の裁量の余地がない情報であるため、文書としての使用許可申請書、使用許可書としてはほとんど意味のないものとなってしまうため、使用許可申請書、使用許可書に記載されている内容を細分化せずに、使用許可申請書、使用許可書をそれぞれ独立した一体的な情報と考え、条例第8条第1号に該当すると判断したものである。

(3)条例の解釈について
条例第8条第1号の非公開情報は、氏名、生年月日等の特定の個人を識別することができるものだけではなく、他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるものが含まれており、ここでいう、照合の対象となる「他の情報」には、公知の情報や、一般に入手可能な情報が含まれるほか、何人にも公開請求権があることから、個人の近親者、地域住民等であれば保有している又は入手可能であると通常考えられる情報も含まれるものである。
このように条例において、「個人識別情報」を非公開情報としているのは、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人の権利利益は、最大限に保護する必要があること、個人の権利利益の中心となるプライバシーの概念は法的に未成熟でもあり、その範囲も個人によって異なり、プライバシーに係る情報をすべて類型化することが困難であることから、個人の権利利益の十分な保護を図るためである。
また、本件文書については「独立した一体的な情報」であると考え、全てについて条例第8条第1号に該当すると判断したものである。
さらに、部分公開についての条例第9条では「非公開情報の部分を容易に分離することができ、かつ、当該分離により公開請求の趣旨が損なわれないと認めるとき」に部分公開することを義務付けており、本件文書の大部分が非公開情報であるため、残りの部分について公開したとしても、「公開請求の趣旨が損なわれないと認めるとき」に該当せず、実施機関は部分公開の義務を負わないものである。

(4)「小型船舶の登録等に関する法律」についての補足説明
他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができることとなる場合の「他の情報」について、「小型船舶の登録等に関する法律」第14条により何人でも交付を請求できる「登録事項証明書」に記載されている情報が考えられる。
「登録事項証明書」の交付の請求は、「船舶番号」がわかれば誰でも行なうことができ、「船舶番号」は、両船側の見やすい場所への表示が義務づけられているため、現地で「船舶番号」を確認した場合には、「船舶の種類」「船籍港」「船舶の長さ、幅及び深さ」「総トン数」「船体識別番号」「推進機関を有するものにあっては、種類及び型式」「所有者の氏名又は名称及び住所」「登録年月日」を調査することができるものである。
したがって、「使用許可申請書、許可書」に記載されている情報のうち、「登録事項証明書」の記載事項と同内容のものについては、「登録事項証明書」との照合により、その「使用許可申請書、許可書」が誰のものであるかという特定の個人を識別することができる可能性が高いものである。

異議申立人の主張

申請者に関する情報(住所、氏名、電話番号、勤務先、所属クラブ)及び艇に関する情報を除くことで、特定の個人を識別することはできないはずである。
実施機関は、申請者に関する情報及び艇に関する情報を除いた他の情報については、ほとんど意味がない情報であると勝手に決め付けているが、意味があるかないかは実施機関が判断するものではなく請求者が判断することである。
使用期間、使用施設、許可番号は、明らかに特定の個人を識別することができないうえに、意味がないものではない。艇のメーカーについても、大半がヤマハであり、特定の個人を識別することはできない。
さらに、部分開示を行なうこととになった場合には、申請者の住所については、町名まで公開しても個人を識別できないし、船舶検査証番号は下3ケタだけを公開すれば、個人は特定できないと考える。
また、マリーナに船を置く申請をしていることなどは、たとえ他人に知られたとしても、その人の権利を侵害することにはならない。

審査会の判断

(1)はじめに
条例上の非公開情報の該当性の審査を実施するに当たり、実施機関の説明及び異議申立人の意見を聴く機会を設け、それぞれの主張を総合的に勘案した上で、本件文書についての非公開情報の該当性の判断を実施したものである。

(2)非公開情報の該当性について

ア.本件文書の全部を非公開情報としたことについて
本件文書の申請者に関する情報については、明らかに条例第8条第1号の非公開情報に該当する記述であり、艇に関する情報についても、他の情報との照合により特定の個人を識別することとなるものがある。
実施機関は、その他の情報である、「使用期間、使用施設、使用料等」については、市に裁量のない記述であることを理由として、ほとんど意味のないものであり、本件文書全体を「独立した一体的な情報」ととらえ、本件文書全てが非公開情報に該当するとし、さらに、その部分を公開したとしても公開請求の趣旨が損なわれる旨の説明をし、部分公開の義務はないと主張しているものである。
しかしながら、使用期間、使用施設などの記述については、それぞれが独立した意味のある情報と解するのが相当である。
意味のない情報とは、単なる記号、符号、罫線などの、その部分のみでは、本当に意味のなさないものや、文章の大半が非公開情報で、残余の部分のみでは、まったく意味がわからないものとなってしまうもの、と解するのが相当である。
そうすると、本件文書全体を「独立した一体的な情報」ととらえることは、適当ではなく、非公開情報ではない情報については、公開しなければならないということが、条例の趣旨である。
よって、本件文書の全部を公開しないこととした実施機関の判断には、誤りがあると言わざるを得ない。

イ.本件文書の非公開情報について
本件文書の非公開情報については、実施機関が主張している条例第8条第1号の個人に関する情報であると考えられ、異議申立人においても、個人に関する情報までを公開するように求めているものではない。
異議申立人の主張するように、マリーナに船を置く申請をしていることについては、たとえ第三者に知られたとしても、その人の権利を侵害することは、ほとんど考えられないものではあるが、条例では、「個人識別情報」そのものを非公開情報としており、権利侵害のおそれの有無は判断材料としないものである。
また、異議申立人は、住所であれば町名まで、船舶検査証番号であれば下3ケタ、のような公開方法により個人を識別できなくなる旨主張しているが、住所、船舶検査証番号といった独立した情報を、さらに細分化して部分公開することまでを義務付けているとは考えられない。
さらには、町名や下3ケタの情報であっても、特定の個人を識別することとなる可能性を否定できないと考えられる。

ウ.個別情報の公開、非公開の判断について
本件文書のどの情報が条例第8条第1号の非公開情報である「特定の個人が識別され、又は他の情報と照合することにより特定の個人が識別されること」になるかについて、個別に検討していくものであるが、その前段階として、「小型船舶の登録等に関する法律」に基づく公証制度との関係について、検討することとする。
この法律に基づく公証制度は、小型船舶の所有権の公証が目的である。
この所有権の公証のために何人でも交付を請求することができる「登録事項証明書」に記載されている情報と、本件文書に記載されている「艇に関する情報」は、たまたま同じ内容のものが多く含まれているが、本件文書の目的は、絵鞆小型船だまり、エンルムマリーナの使用関係について、法的に明確にするものであり、「登録事項証明書」と「使用許可申請書、許可書」とは、全く別の文書である。
また、過去の「使用許可申請書、許可書」に係る艇については、現在は置かれていない場合があり、艇の所有者も変更していることがある。
これらの理由からも、小型船舶の所有権の公証を目的とする「登録事項証明書」と、使用関係を法的に明確にする「使用許可申請書、許可書」とは、全く別のものであると考えることが適当である。
したがって、「登録事項証明書」に記載されている情報は、条例第8条第1号に規定する特定の個人を識別することとなる「他の情報」と考えられるため、同じ内容の本件文書の情報については、非公開情報ということになる。

1.非公開とすることが相当と判断される情報

  • 申請者の欄の情報
  • 住所・電話番号・氏名・生年月日・勤務先・所属クラブ名
    これらの情報については、個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるもの又はその可能性が高いものであることが認められる。
    勤務先、所属クラブ名については、それが大きな組織であったならば、個人識別ができない場合もあると思われるが、対象がエンルムマリーナ又は絵鞆小型船だまりの利用者というように限定されている中では、勤務先や所属クラブ名の情報であっても、特定の個人を識別(誰の書類であるかがわかる)できる可能性は高いものである。
    また、法令等の規定又は慣行として公開され、又は公開することが予定されている情報にも該当しない。
    したがって、申請者の欄の全ての情報については、非公開とすることが相当と判断されるものである。
  • 艇の種類等の欄の情報(材質の欄を除く。)
  • 船名・艇種・長さ・幅・重量・艇体メーカー、形式・機関メーカー、形式
    これらの情報のうち船名以外については、「小型船舶の登録等に関する法律」に基づく「登録事項証明書」に記載されている情報とほぼ同じ内容となっており、「登録事項証明書」には
    「所有者の住所氏名」の記載があるため、これらの情報と「登録事項証明書」を照合することにより、特定の個人を識別する可能性が極めて高いものと考えられる。
    「船名」については、それだけでは「登録事項証明書」との照合はできないものであるが、
    「船名」と「船舶番号」は船の見やすい場所に表示されており、「船舶番号」から「登録事項証明書」を入手することが可能となるため、間接的ではあるが照合が可能となり、特定の個人を識別することとなるものと考えられる。
    したがって、艇の種類等の欄の上記情報については、非公開とすることが相当と判断されるものである。
  • 船舶検査証書番号
    この番号のアラビア数字部分については、「船舶番号」と同じ番号とすることとなっていることから、「登録事項証明書」との照合により特定の個人を識別することとなるものである。
    したがって、この情報については、非公開とすることが相当と判断されるものである。
  • 海技免許状番号
    この番号は全国統一の方法により付けられ、重複した番号がないことから、特定の個人の情報である。
    この番号のみでは、特定の個人を識別することはできないが、海技免許状は、運転免許証と同様に身分証明の書類として利用させることがあることから、他の情報と照合することにより特定の個人を識別することとなる可能性は否定できないものである。
    したがって、この情報については、非公開とすることが相当と判断されるものである。
  • 摘要の欄(艇の長さの記述に限る。)
    艇の長さの情報が記載されていることがあり、その場合には、「艇の種類等」の欄と同様に非公開とすることが相当と判断されるものである。

2.公開することが相当と判断されるもの

  • 様式の名称(使用許可申請書、許可書)
  • あて名等(室蘭市長、下記のとおり申請します。などの記述部分)
  • 申請年月日、許可年月日
  • 収受印
  • 使用期間
  • 継続使用の有無
  • 使用施設
  • 決裁欄(上記のとおり許可してよろしいか。などの記述部分)
  • 許可番号
  • 共同所有者の有無
    これらの情報については、照合することが可能な「他の情報」はなく、特定の個人を識別することはできないものである。
    また、他の非公開情報に該当することは、考えられないものである。
    したがって、これらの情報については、公開することが相当と判断されるものである。
  • 艇の材質
    この情報については、「登録事項証明書」にも記載はなく、ほとんどが同じ材質であるため、特定の個人を識別することはできず、公開することが相当と判断されるものである。
  • 使用料
  • 販売代理店
    使用料は、船の長さによって金額が定められており、船の長さの情報については、非公開とすることを相当としているが、使用料ではおおよその長さがわかるのみであり、特定の個人を識別することはできないものと判断される。
    販売代理店については、特定の販売代理店を利用する者が多い訳ではないため、特定の個人を識別する可能性について検討してみたが、販売代理店という情報のみで、特定の個人を識別する可能性までを想定しなければならないとした場合は、「個人識別情報」の範囲が拡大しずぎることとなってしまう。
    したがって、これらの情報については、公開することが相当と判断されるものである。
  • 摘要欄(艇の長さの記述を除く。)
    この欄に、艇の長さの記述がある場合には、当該情報について非公開とすることが相当と判断されるものであるが、それ以外の場合には、特定の個人を識別できず、公開することが相当と判断されるものである。

(3)終わりに
よって、当審査会は、「審査会の結論」のとおり判断する。

審査会の審査経過

1.平成20年5月23日:諮問書及び理由説明書を受理

2.平成20年5月29日:異議申立人より反対意見書及び意見陳述申立書を受理

3.平成20年5月30日:審議(事案の経過・概要の精査)

4.平成20年6月10日:異議申立人の意見陳述を実施

5.平成20年6月10日:審議(審査会判断の決定)

6.平成20年6月25日:答申

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